御曹司は頑固な部下を甘やかしたい
お店を出る少し前に黒部さんがタクシーを手配してくれた。
タクシーが着いたタイミングで店を出て2人でエレベーターに乗り込む。私達以外誰も乗っていなかった。

不意に黒部さんがネクタイを緩める。
男性にしては白くて長い綺麗な指先で器用にネクタイにひっかける。外す時にシュッっという音が小さく響いた。

「暑くて。お酒入ってるからさ」

私の視線に気づいたのか黒部さんが告げる。素早くネクタイを畳みカバンにしまうとワイシャツを第二ボタンまで外す。
ただこれだけの動作に色気が詰まっている。
露出する肌。見える鎖骨。

「会社の飲み会では常にきっちりスーツを来てますよね」

これ以上余計なことを考えたくなくて話しかけた。

「自分より上司がいたらね。多少は気を張るよ」

苦笑いされた。

「まぁそうですよね」

上司がいると飲み会ですら仕事みたいに緊張する。

「平手も今日気を使った?」

顔だけ横を向いて私の方を見る。その時に首筋の骨のラインが強調されよりセクシーに見えた。
こんな不埒なことばかり考えてしまう私が気を張っているわけはない。
返事を返さずにいる私に黒部さんが気遣う。

「答えづらいよな。俺は平手といる時はリラックスできるんだけど」

1階に到着し黒部さんは少しだけ先を歩く。それでも歩調は緩めてくれている。
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