天才料理少女は、イケメン兄弟の恋心に気づかない
突然、話が変わった。
この子、せっかちすぎない?
「喫茶店の名前」
ああ、昨日言ってた、二人のおばあちゃんがしていたお店のことか。
「小学校が終わったら、放課後はいつもマリーですごしてたんだ。兄ちゃん、マリーが閉店したときも寂しそうだったけど、取り壊しが決まってから元気がなくて」
久保田先輩のことは全然知らない。
でも、昨日はずっとにこやかに笑っていた。
あれは、表向きの顔だったのかな。
辛い気持ちを隠しての笑顔なのだとしたら、それはちょっと切ない。
「イベントに、料理なしの飲み物だけで参加することも考えたんだけど、それだとマリーじゃない。俺が作ろうかと思って練習してみたんだけど、あと3カ月ちょっとで人に出せるものを作れる気もしなくて」
お兄ちゃん思いで、優しいな。
でも……。
「お父さん・お母さんに頼むのは?」
「うちの両親、共働きでものすごく忙しくて」
我が家も共働きなので、私が律くんと同じ状況だったら頼めないかもしれない。
「じゃあ友達に」
「……料理を頼みたいのは、誰でもいいわけじゃないんだ」
だからって、顔も知らなかった私にどうして頼むの?