パルクール女子と不良くんたち。~最強不良男子くんが絡んできます!~
1話 始まり?
「行ってきます!」
返事がないマンションの一室に言った。
私は皇 飴乃。
わけあって一人暮らしの、ただの地味女。
――だけど。
私には、ひとつだけ秘密がある。
それは――
4階の窓から一歩足を踏み出す。
だん、と壁を蹴った。
冷たい風が全身を包む。
そして、近づく地面に足を向け、手すりをつかんで勢いを減らして着地する。
「ほっ…と!今日も大丈夫!調子いいっ…!」
――私が「トレーサー」と呼ばれる、いわゆるパルクールのプレイヤーであること。
ちらっとスマホの時計を確認する。
(ちょっと寝坊しちゃったけど…ここから走れば間に合う…!)
「っ…!大きいっ…!」
目の前にあるのは、綺麗な大きい学校だった。
(楽しみだなっ…!新しい学校生活…!)
期待で胸を膨らませていた、その時。
前を歩いていた人にぶつかってしまった。
ギロッとにらむようにこっちを見る。
「あ…!ごめんなさ、」
「誰だお前?見ない顔だな?」
「ひっ!?」
目の前に立ちふさがってきたのは、目つきの鋭い大柄な男の子。
「うちの制服?転校生か何か?」
「あ、えっと…そうです!転校してきてっ…」
ふーん、と言ってその子は手を頭の後ろに回した。
「何年?」
「2年、です。」
「…は!?同い年!?1年かと思ったわ!」
(それは…子供っぽいってことなのかな…!?)
心の中でもっと大人っぽくなろうと決心する。
「まーこの学校広いしなー?職員室までぐらいは送ってやるよ!」
「…!ありがとう、ございます!」
「いいって!あと敬語いらねーよ?」
にかっと笑ったその人は
「職員室はこっち!ついてきてよ!」
「う、うん…!」
(すごくいい人だ…!安心したっ…。)
鼻歌を歌いながら歩くその人。
と、何かに気づいたように、歌うのをやめてぐりっとこっちに顔を向けた。
「お前さー?この学校のことよく知らねーの?」
「…え?うん、普通の中学校だとしか…」
「ふーん…。まぁいいや!そのうち知るだろうし?」
「…?」
(どういうことなんだろ…なにか特別なことでもあるのかな、この学校…。)
頭の中にはてなマークが浮かぶ。
徠朱くんは再び前を向いて歌いながら歩きだした。
「ここが職員室!じゃーな!」
「ありがとうっ…!本当に助かった!」
ぶんぶんと手を振りながら走っていったその人はあっという間に姿が見えなくなった。
よし、と気合を入れるように言って職員室に入る。
「失礼します!」
「…本当に知らねーんだ、アイツ。ここ学校が『不良校』って呼ばれてるって。」
――そうつぶやいた声は、私に届くはずがなかった。