優しい死神さんと、空気じゃない私
「嫌だ……そんな別れの言葉なんて言わないで、お願いだから消えないでよ……!」

 必死に追いかける玲奈がたどり着いた先は、彼が生まれたあの神社だった。

 彼が境内に足を踏み入れると、どこからともなく大勢のカラスたちが集まり、悲しげな黒い瞳を彼へ向けていた。

 玲奈が溢れる涙の中で見上げると、彼は神聖なお社の前で静かに足を止めた。

 昇り始めた朝の光が彼だけを包み込み、彼はふり返ると、玲奈へ最後の言葉を残した。

「いいかい、玲奈ちゃん。君は決して空気なんかじゃない。紛れもなく、ここに存在しているんだ。だから……自分を、もっと大事にしてあげてね」

 そう言い残すと、彼の身体は光の粒子となって朝日に溶け、静かに消えていった。

 玲奈はその場所を見つめたまま、声を限りに泣き叫んだ。

 カラスたちは主人との別れを惜しむように、玲奈の泣き声を覆い隠すかのように、一斉に悲痛な鳴き声を響かせ続けていた。
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