溺愛なんて、お断りしますっ!

◇第1話 最悪なセンターと最悪な出会い

 大きなガラス張りのビルを見上げて、みのりは胸の前でぎゅっと両手を握った。

 今日からここで働く。
 芸能事務所の新人社員として。
 そして、誰かの夢を支えるマネージャーとして。

 高校の文化祭で、裏方として走り回ったあの日から、ずっとそうなりたかった。
 表に立つより、頑張る誰かの隣で支えたい。
 努力が実る瞬間を、いちばん近くで見届けたい。
 そんな気持ちでここまで来たのだ。

「よしっ」

 頬をぺちんと叩いて、みのりは受付を済ませる。
 案内されたエレベーターに乗り込み、指定された階のボタンを押した。

 少しだけ緊張がほどけた、その時だった。

「待って」

 低い声と一緒に、ひとりの男の人が滑り込んできた。

 黒い帽子に黒いマスク。
 目元しか見えないのに、妙に目を引く人だった。背が高くて、立っているだけで空気が変わる感じがする。
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