席替えで隣になった君は、あと百日しか生きられない
プロローグ
「……マジで隣じゃん」
黒板の席順表と私の顔を交互に見て、あいつがふっと口元を緩めた。
「おい結斗ー! お前ひなの隣かよ、ずりいぞ!」
後ろの席からクラスの男子がいつも通りあいつの肩を叩く。
あいつ──結斗は「うるせえよ」とそっぽを向いたけれど、嬉しさを隠しきれていないのが私にはよく分かった。
周りのみんなには内緒だけど、私──ひなと結斗は付き合っている。
付き合って初めて隣の席になれたのが、本当は私だって、飛び上がるくらい嬉しい。
先生が黒板に向いた隙に、隣の席からちぎったノートの切れ端がすっと滑ってきた。
そこには、結斗の少し丸っこい字で『よろしくね、ひな』とだけ書かれている。
私はペンを握り直し、その下にこっそり文字を書き足してあいつの机に戻した。
『こちらこそ。授業中だよ、ゆいと』
手を伸ばせば届く距離で、いつものシャーペンをカチカチと鳴らしている君。
――君の余命があと百日だなんて、クラスの誰も知らない。
世界で私だけが、この新しくなった隣の席で、君の静かなカウントダウンを聞いている。
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