ヒミツの身代わり王子様

Ⅵ ヒミツの身代わり王子様の「おねがい」

階段の踊り場に、ふたりの静かな心音が響く。
しばらくして、琥珀はふうっと息を吐き出すと、少し意地悪な、だけど甘ったるい笑みを浮かべた。

「なあ、梨乃」

「ん……?」

「そんなに可愛くイメチェンして、俺をメロメロにした罰としてさ」

琥珀は梨乃の耳元に顔を寄せ、とろけるような声で囁いた。

「これから放課後、俺の部屋に来てよ。誰もいないところで、その可愛い髪をずっと撫でさせて」

「……それ、罰じゃなくて、ただのわがままじゃん」

「うん、わがままだよ。だってみんなの前じゃ、こんなに甘えられないんだもん」

琥珀は梨乃の顎を優しくクイッと持ち上げ、甘えるような瞳で見つめてきた。

「ねえ、梨乃。……聞いてくれる?」

学校では誰もが憧れる完璧な王子様。だけど、自分にだけはこんなに犬みたいに甘えてくる。
そのギャップに胸を撃ち抜かれながら、梨乃は恥ずかしそうに、だけどしっかりと頷いた。

「……しょうがないなあ。今日だけだよ?」
「やった。……大好き、梨乃」

ふたりだけの秘密の廊下で、甘い恋の音がそっと弾けた。
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