Should I Stay or Should I Go
 思いがけない声に、私はゆっくりと振り向いた。
「高崎先生⋯⋯」
 声の主は、太田ではなく、先生だった。
「どうしてご存知なんですか?」
「それは⋯⋯前にカルテを見て、たまたま覚えてたから。ところで、どうしたの?まさか、今日もすっぽかされた⋯⋯?」
 小さく頷く。
「でも、もういいんです。先生が仰っていたように、完全に舐められて、これっぽっちも愛されてなどいないこともよくわかりました。ひとりになるのは確かに怖いですけど、もう決して彼のもとには戻ったりしません」
「勇気の要る決断だったよね。よくやったよ」
「先生のお陰ですよ。どこかで決着をつけなければとは思ってましたから」
 そう言うと、先生はすまなそうに、
「お陰だなんて⋯⋯なんだか、申し訳ない。まるで、別れさせたみたいで⋯⋯」
「いいんです。フラれる時ぐらい、少しでも綺麗でいたかったのかも」
 誰に見せるわけでなく、あくまで自分のために。
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