神崎くんは残念なイケメン

15 大学2年、3月

 春休み中にサークル棟の共同会議室の改修工事が入ることになり、使用できないため、例年2月にやる今年の追いコンは3月頭にずれ込んだ。会場の確保が必要になったからだ。
 この追いコンで、名実共に引き継ぎ完了となる。
 晴れ晴れとした気持ちで集合場所に向かった私は、先に来ていたサリー、早紀、幸弘、神崎くんを見つけて手を振った。
「あっ。私、またお金下すの忘れてた」
「お前なー。もうちょっと余裕持っておけよ」
 サリーが思い出したように財布を見て言うと、幸弘が呆れた。サリーは使いすぎないようにと、必要最低限のお金しか持ち歩かないのだ。
「銀行、行く?郵便局あったよね。私、出したい手紙があるから、切手買おうと思ってたの」
 早紀が言うと、サリーが頷いた。
「よし、幸弘、あんたも来なさい」
「なんで俺?」
「ボディーガードよ。大金持ち歩くのに必要でしょう」
「大金って……」
 今日の会費は5000円だ。卒業する先輩の飲食代と、お花代は後輩で負担する。
「5000円でも私にとっては大金なの!持ってるとドキドキしちゃうの!行くよ!」
「はいはい」
 サリーと早紀が腕を組んで歩き出す後ろを、幸弘が嘆息して歩いていく。
 私と神崎くんは顔を見合わせて笑った。
「それ、コーヒー?」
 神崎くんが私の手元を見て言う。駅前のコンビニで買ったドリップコーヒーを持っていた私は頷いた。
「適温?」
「まだちょっと熱くて」
 神崎くんが笑った。
「鈴木さん、いつもブラックで飲むよね」
「甘い飲み物苦手なの。甘い食べ物は好きなんだけど」
 私は苦笑した。
「お酒も、あんまり甘いの飲まないの?」
「うん。カクテルだけじゃなくて、ラム酒とか、芋焼酎とかもだめ。香りが甘いから」
 なるほど、と神崎くんが言った。
「そう言われると、俺は香りが甘いのが好きかも。ラム酒も、芋焼酎も好きな方だな」
「あ、そうなんだ」
 私は言ってから、気づく。
「そういえば、神崎くんと近くで飲んだことなかったね。神崎くん、いつも人に囲まれてたから」
 神崎くんが苦笑した。私は、何かをごまかすように一気に続ける。
「最近ゆかりちゃんと仲いいよね。ゆかりちゃんも甘い香りの飲み物好きだった気がする。可愛い子には甘い飲み物も似合うよね」
「関係ないでしょ」
 神崎くんが笑って言った。
「俺はむしろ、塩で熱燗飲んでたり、ジョッキビール一気飲みしてる子の方が気になる」
「何それ。もはやおっさんじゃん」
 さすがに私もそこまでではない。思わず笑うと神崎くんも笑った。
「あとは、おしぼりで顔拭いたり?」
「やだ、それ。メイク崩れるよ」
 他愛もない話に二人で笑うと、神崎くんは急に思い出したように言った。
「そうだ。鈴木さん、連絡先交換しよう」
「は?いまさら?」
 私は眉を寄せた。相変わらず神崎くんはよく分からない。
「だって、今知ってるのって、こばやんから聞いたのだもん」
 だもん、って言われても……唇を尖らせた顔、かわいい。イケメンはどんな表情も許されるのか。恐るべし。
 でも、改めて交換したところで、何か変わる訳でもないのに。
 私が疑問符を浮かべている間に、神崎くんはスマホ操作を終え、連絡先の送信画面を映し出した。
 私はよく分からないながらも、拒否する理由もないので受信できるよう画面に触れる。互いに連絡先を送り合ったところで、神崎くんは晴れ晴れとした顔で笑った。
「これでよし」
 あまりに満足げなので水を差す気にもならず、かといってその行為にどういう意味があったのかも分からず、首を傾げていたところに、サリーたちが戻って来た。

 追いコンは例年だと1年の出し物から始まるが、場所が居酒屋のため、乾杯からスタートした。
 50人ほどの大所帯になるので、チェーン居酒屋の個室を確保してある。
「ゆかりちゃんは、もう彼氏できたの?」
 ゆかりちゃんの隣に陣取ったホッシーこと星野先輩、相変わらずチャラい。けど、システム系の子会社に無事就職が決まったらしい。
「まだですー。なかなか振り向いてもらえなくて」
「ゆかりちゃんにときめかない男とかいるの?マジ?信じらんない」
 偶然にも正面になってしまった私は、繰り広げられる会話に、どこまで口を出したものかと思いながら、ビールを一口飲む。
「もしかしてサークルのメンバー?コッコ、相談乗ってやんなよ」
「そうですねー」
 私は苦笑する。
「でも、私、あんまり経験ないので。話聞くことしかできないです」
「でもコッコ、男心わかりそうじゃん」
 ホッシ―先輩が笑う。私も曖昧に笑った。
「どうでしょうねー」
「1年生、集合してくださーい」
 声をかけたのは相ちゃん。新役員の紹介と、1年の出し物が始まるのだ。
「ゆかりちゃん、行ってらっしゃい」
 ゆかりちゃんは私に目礼して、集まった1年とともに並んだ。
「元部長から、新部長の紹介をします。新部長は、1年テノール、きらりんこと金田吉良くん」
 ぱちぱちと拍手が起こる。
「副部長以下は、きらりんに紹介してもらいまーす」
 相ちゃんが拍手をして座ると、金田くんは一礼して、副部長の香奈ちゃん始め1年の役員紹介をした。
「今日は他のお客さんの迷惑になるとまずいので、アカペラで一曲歌いたいと思います」
 曲は、耳慣れたハリウッド映画のテーマソング。一部が指を鳴らして拍子をとり、アルトとテノールが主線を歌った。
 終わって拍手をすると、それぞれ席に戻っていくが、ゆかりちゃんは男子の先輩に声をかけられ、なかなか戻ってこれずにいる。
 私は立ち上がって、廊下からゆかりちゃんに声をかけた。
「ゆかりちゃん。電話みたい。鞄の中でバイブ鳴ってるよ」
 ゆかりちゃんは顔を上げ、私の方にやってきた。
「ごめん、電話は嘘。戻りたいかなって思ったから」
「あ、そうなんですか」
 ゆかりちゃんは当たり障りない笑顔で応じる。あれ、もしかして不要な気遣いだった?
「歌、もったいなかったね。サークル棟ならもっと大きく歌えたのに」
 私が言って戻ろうとすると、ゆかりちゃんが袖をとって引き留めた。
「コッコ先輩。ちょっとお話ししてもいいですか」
 嫌だとも言えず、私は嫌な予感がしながらうなずく。
 みんなが騒いでいる個室から少し離れ、他のお客さんにも迷惑にならなそうな隙間に連れ立っていく。
「……私、ざっきー先輩に嫌われてるみたいなんです」
 私はどう反応してよいものかわからず、そう、と言う。
 そんな子供じみた態度をとる人ではないと思うんだけど。
「なんか、話しかけてみても適当な感じっていうか」
 首を傾げるその表情は、悩ましげで庇護欲をかきたてる。
「コッコ先輩、誰とでも仲いいじゃないですか。ざっきー先輩、私のことどう思ってるか聞いてもらえませんか?」
 私は苦笑した。そんなの私にいわないでほしい。
「別に、神崎くんはゆかりちゃんに特別距離を置いてるつもりはないと思うよ」
 トラブルを避けるために、女子にはほどほどの距離を置くのが神崎くんなりのつき合い方なのだろう。それは見ていて分かる。
 もしかしたら、ゆかりちゃんは今まで、自分にかしずく男子しか接したことがないのかもしれない。自分が気に入った人は、なおのこと。
「そうでしょうか」
 ゆかりちゃんがうつむいた。
「うん。あんまり気にしなくていいと思うよ」
 聞き終えたゆかりちゃんが、ため息をついて言った。
「コッコ先輩は、いいですよね。自信があるから、そういうふうに、他の人の目なんて気にせずにいられるんでしょうね」
 私は自分の表情が凍りつくのを感じた。
 きっと、相手には悪気がない。むしろ、誉めているつもりなんだろう。
「バリバリ仕事できて、男の人とも張り合って、一人で生きていけるタイプですもんね」
 ゆかりちゃんの瞳を、みるみるうちに涙が覆った。
「私、そんな風に強くなれないです」
 とうとう、瞼に受け止めきれない涙が、ゆかりちゃんの頬を伝い落ちる。
 ちくり、と胸が痛んだ。
 自分が泣かせたという罪悪感からではない。あくまで、かわいらしいものが傷を抱えている姿に、胸が痛んだのだ。
 どうあがいても、こういう武器を、私は使える気がしない。
 そんな武器を当然のように使えるあなたに、私の何がわかるの。
 その言葉は、喉元で留まる。
「あっれ、コッコ、何ゆかりちゃん泣かせてんの」
 声はケイケイのものだった。ちょうど手洗いから戻って来たらしい。ゆかりちゃんが涙をぬぐった。
「何でもないです。コッコ先輩は悪くないです」
「でも泣いてるじゃん。おいコッコ、後輩泣かせんなよー」
 笑いに変えようとしているのは、分かる。分かるが、胸がずきずきと痛む。
 こういう女の子を前にすると、私はいつでもそういう役どころだ。
 私なら、叩いても壊れないと思っているんだろう。笑いに変えて終われると。
 無理に浮かべた笑いは、苦笑にしかならなかった。苦い、苦い、笑み。
 気分が悪い。吐き気がする。
「どうした。おい、大丈夫か?」
 不穏な空気を察したらしく、お店のサンダルをつっかけて来て言ったのは幸弘だった。ゆかりちゃんは首を振り、大丈夫です、と言う。
「香子はーー」
「大丈夫、放っておいて」
 吐き出すように言った言葉は、びっくりするほど冷たく、そっけなかった。
 幸弘とケイケイが、驚いたのが分かる。口元に自嘲の笑みが浮かんだ。
「どうせ私はキツイ女だよ」
 低い声で呟いて、私は今できる限りの笑顔を浮かべた。
「ちょっと頭冷やしてくる」
 私は部屋に戻ると荷物と上着を手に取った。それに気づいた早紀が、どうしたの、と声をかけて来る。
 早紀の顔が見れなかった。
「ちょっと、酔ったみたい。水でも買って、少し外の風にあたってくる」
「大丈夫?」
 心配して肩にかけられた早紀の手を振り払いたくなる。その衝動が、我ながら情けない。どうにか顔は見ずに、早紀の方に向かって笑った。顔を見てしまったら、押し殺した感情が暴走しそうだ。
「うん、大丈夫。ありがとう、心配かけてごめんね」
 こんなうわべだらけの言葉、誰が言ってるんだろう。
 私は賑やかさから逃れるようにそこを出て、声をかけようとする幸弘を無視し、店の外に出た。
 誰にも追ってきてほしくなかった私は、駅から離れる方向に行ってみて、小さな公園を見つけた。
 街灯が一本だけ、心もとなくベンチを照らしている。
 私はふらりとベンチに腰かけた。
 ーーなんで、この日に。
 晴れ晴れとしていた、宴会前の気持ちを思い出す。
 気持ちよく先輩たちを送り出すために集まったのにーー
 頭の中がいろんな思いでごちゃごちゃだった。
 ゆかりちゃんや、ケイケイたちだけが悪いわけじゃない、と分かっている。
 結局、自分で自分に翻弄されているんだ。
 次いで、幸弘と早紀の声を思い出した。その声に対する嫌悪感と共に。
 ひりひりと胸を焼く自責の念。
 サリーの言葉が蘇る。
 ーー言わなくてよかったの。
 言ってたら、何か変わったんだろうか。幸弘の隣にいられたんだろうか。そんなことはない、それは私にも分かっている。幸弘の気持ちは私にはなかったのだから。サリーだってそれを分かっていたはず。
 うつむいて手で顔を覆い、深々と息を吐き出す。すると、急に人の気配がして、ぎくりとした。
「こんばんは」
 男性の声に、恐る恐る目を上げると、トレンチコートを着た男性が立っている。ポケットに手を入れ、前を覆っていた。
 私は警戒して、少しだけ腰を浮かした。背中にじわりと変な汗が浮かぶ。
「今日は、少し暖かいですね」
 言うと、男性はコートを広げた。
 ハッキリ見ていなくても、その半身が何も身につけていないのが分かり、思わず眉を寄せる。
 えもいわれぬ恐怖心と、変に冴え渡った思考が同居しているのを感じる。この場から何ごともなく逃れる方法を考えていたときーー声がした。
「コッコ?」
 私が振り返るのと同時に、男性は走り去った。
 公園前の通りに立っていたのは、八代先輩だった。
 私は深々と息を吐き出し、その途中で、自分が震えていることに気づく。
「え、何?さっきの人、なんかあったの?」
 私よりわずかに高い程度の先輩が、キョトンとしたまま近づいてくる。男性は先輩に背を向けていたから、先輩には何があったか分からなかったのだろう。
 私は急に激しくなる動悸に、意識的に深呼吸を繰り返した。八代先輩が、触れる程の距離に立つ。
「……大丈夫?」
「は……」
 はい、と言おうとしたのに、呼吸が途切れた。
 改めてもう一度深呼吸して、苦笑する。
「先輩ってば、いっつも、タイミング良すぎ」
 八代先輩は困ったように笑った。
「なに、ヒーローみたい?」
「ヒーロー……だったらいいのに」
 私のヒーローなんて、どこにいるんだろう。
「なんか、たまってんのな」
 八代先輩は私の隣にすとんと腰掛けた。
 えーと、と鞄やらポケットやらを探って、おっ、と握った手のひらを差し出す。
「ま、とりあえずこれでも食べて落ち着こう」
 開いた手のひらには、イチゴミルクのキャンディが二つ。私は噴き出した。
「すみません、それ、私苦手です」
「えっ、マジでー?美味しいじゃん。俺食うよ」
 先輩は言って、一つ包みを開くと口に入れた。満足げな顔で舌鼓を打つ。
「うーん、うまい」
 公園の明かりは相変わらず最低限の街頭だけだったが、一人ではないからか、ずいぶん見え方が変わって見えた。
「先輩って、陥れたり、助けたり、なんか頼っていいのか、いけないのか、わかんないです」
「えー。俺にとっては、コッコは可愛い後輩よ。頑張り屋さん過ぎてちょっと心配だけど」
 八代先輩は言って、後ろ頭に手をやる。
「まああれだ、あの日はちょっと、魔が差したと思ってくれ」
 私は公園の中の暗闇に目を移して呟いた。
「……もし、あのとき帰らなかったら、どうなってたんですかね」
 八代先輩は苦笑する。
「さあ。俺にも分からない」
 言うと、八代先輩はわざと掛け声を出しながら立ち上がり、ズボンの後ろを払った。
「さて、俺は遅ればせながら追いコンに参加してきます。コッコはどうする?一緒に戻る?」
 何も言っていないのに、何かあったらしいと察しているらしい。
 私も立ち上がった。
「ご一緒します」
 隣り合って歩きながら、私は呟くように言った。
「自分では忘れてても、傍から見れば女なんですね。私って」
「だからそう言っただろ。ーーもしかして、さっきの男って」
「寒くないんですかね。風邪引きそうでした」
 八代先輩の笑顔が引き攣った。
「お前なー」
 まあ、キャーキャー言わなかったのは賢明だったけど。と付け足した。

「やっしー遅ーい」
 ゆっきー先輩が酔った声で呼ぶと、八代先輩は苦笑しながら入って行った。
「そっちが出来上がるのが早いよ。まだ始まって1時間でしょ」
「あれ、コッコも一緒だったの?」
「外でばったり。さながらプリンセスを救い出すナイトのように現れた俺でした」
「夜だけに?」
 私が言うと、そっちのナイトじゃないだろ!と八代先輩が笑う。くしゃりと少し乱暴に頭を撫でられたのが、不思議と居心地よく感じた。
 ナイトに救われるプリンセスなんて、私にはあまりに分不相応だ。
 さきほどのメンバーの近くに行く気にはならなかった。神崎くんの隣にも。だから、八代先輩が敢えて隣にいてくれるのがありがたかった。周りは自然と先輩たちになるからだ。
「やっしー、今度はコッコに手出したのか?噛まれないよう気をつけろよ」
「出してないよー。手出しさせてもらえないもん」
 アンドゥ先輩の言葉に、八代先輩は笑う。
「つーかアンドゥ、コッコを猛獣みたいに言うなよ。乙女心は傷つきやすいんだぞ」
 私は思わず苦笑する。八代先輩が、先輩なりに気遣かってくれているのがよく分かった。私が語らないながらも、大体を察して、遠回しに慰めてくれている。
 ケイケイが私を気にしているのが分かる。声をかける機会をうかがっているようだったが、謝られてもむなしいだけなので気にしないふりをした。
 冷えた手に熱燗を持ち、ちびりと飲む。喉が熱くなる。
「今日は、先輩がいてくれてよかったです」
 八代先輩は幼い顔で笑った。
「今日は、な。間違いのない助詞を使うところが、コッコらしい」
 また失礼なことを言ってしまったかと、口を開きかけたとき、八代先輩が通路を挟んだ隣のテーブルに焼酎のボトルを見つけて声をかけた。
「ざっきー、そこのボトル、まだある?」
「ありますよ。飲みます?」
 ひょいとボトルを手にして神崎くんが言う。神崎くんも飲んでいるはずなのに、全然顔色が変わっていない。
「うん、コッコと交換。いる?」
「私モノじゃないんですけど」
 内心ぎくりとしながら、冗談めかして非難の声をあげる。神崎くんは一瞬息をのんでから、神妙にうなずいた。
「……いります」
 うわぁ。ちょっと待ってよ。心の準備が。
「モノじゃないって……」
 私は助けを求めるように一瞬辺りを見回しーー意味がないと気づいてやめた。
 何で今日なの。なんかついてない。とにかくタイミングが悪い。
 私は八代先輩に引っ張られるように、神崎くんの横に連行された。
 座りながらこれ以上ないくらいに深いため息をつく私に、神崎くんが首をかしげる。
「もしかして、元気ない?」
「私も人間なので、そういうときもあります」
 私はふてくされて言った。かっこいい私の幻想なんか、崩してしまえ、と半ばやけになる。
 ーー今日は神崎くんのせいで、えらい目に合ったんだから。
 責任転嫁を自覚しながら、すねて唇を尖らせる。
「泣くときも怒るときもあるし、家ではパジャマで一日過ごすときもあります」
 神崎くんはあっさりと一笑した。
「そりゃ、そうでしょ。誰だって、いつもかっこつけてはいられないよ」
 力みを感じない答えに、不思議と心が軽くなる。
 それが逆に居心地悪く感じて、黙ったままおちょこに唇をつけた。
「パジャマ派なんだ。ルームウェアとかジャージじゃなくて」
 え、今の話の着眼点、そこ?
 やっぱり神崎くんはよくわからない。
 私は結局ほとんど話さず、神崎くんもあえて話しかけてくることなく、追いコンは終わったのだった。

 帰宅した私のスマホに、神崎くんからメッセージが来ていた。
[これからは遠慮なく送ります]
 笑顔の顔文字と共に送られてきたそれに、苦笑して、返す。
[どうぞご自由に]
 --でも、結局、頻度も内容も、今までと変わらないのだった。
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