崖っぷち魔術師は嘘をつく~一夜の過ちを犯した相手には、好きな人がいました~
「……嬉しいです、シリル様」
「ミランダ……」
「シリル様。私も……私も、あなたのことが、好きです。好きになりました」

 決意を込めて、ミランダは告げた。

 最初は、同情のようなものだった。熱で錯乱していたシリルを、責めることはできない。
 シリルのことは弟のように大切なのだから、セドリックのこともきちんと育てようと思った。

 だがシリルと共に過ごすうちに、彼に恋をした。彼を愛するようになった。
 ……彼に愛する人がいるから、この想いは封じなければならないと思った。

「私と一緒に、セドリックを育ててくれませんか? そして……アルベック城に戻るときは、あなたも一緒がいい」
「……いいのかい? 僕は、空を飛べないよ?」

 シリルがそんなことを真面目な顔で言うので、ミランダは噴き出してしまった。

「もう、飛べなくていいんですよ。みんなで一緒に陸路で行けばいいんですから」
「……僕だけ飛べないの、結構気にしているんだ。きっとセドリックもいつか飛べるようになるから、里帰りするときも奥さんと息子は先に飛んでいって、僕だけ馬でちまちま行くしかないんだと」
「馬車で一緒に行きますよ。でも……たまには先に飛んでいくかもしれません」

 ミランダは微笑んで、シリルにキスされた手のひらを返し、彼の手の甲をそっと自分の頬に当てた。

「そんな妃でもいいなら……私も、あなたと一緒になりたいです。お慕いしています、シリル様」
「……ああ、もちろんだ!」

 シリルはぱっと笑顔になり、ミランダを抱き寄せた。彼の片手がミランダの後頭部に回って、唇が重ねられる。

 ……少し離れたところで女王が「まっ!」、王配が「おや」と楽しそうな声を上げる傍ら、祖母の腕に抱かれたセドリックは「うまー!」と、両親が口づけるところを嬉しそうに眺めていたのだった。
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