旅行に来ていたはずが、花嫁オークションで売られていました
「続きまして、目玉商品をご紹介させていただきます! 今回の目玉商品は色白、黒髪の日本人女性ーッ!」
ここはどこだろうか?
体が痺れて全く動かない。目隠しをされているのか、視界もずっと暗いままだ。
何も上手く聞こえず、何を言っているかわからない。しかし流暢な男性の声は聞こえていた。
「それでは、オークションを始めさせていただきます。二万ドルからスタート!」
「一千万ドルだ。一千万出そう」
以前聞いたことがある男性の声が聞こえて、私の意識は再び混濁し始めた。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「ふぅーっ。潮風が気持ち良いーっ」
私は今、旅行に来ている。
ブラック企業、業務量過多、度重なる飲み会、人間関係、上司からの理不尽な要求――などなど。
などなどが積み重なり、膨れに膨れ上がって爆発。倒れる寸前で退職届を書き、此度無事に退職できたという訳だ。
(次のお仕事決まらないまま退職しちゃったけど……、別にいいよね。旅行から帰ったら次のこと考えよ)
船の甲板の上で自嘲する。
青い海と青い空は、悩みなんて全部かき消してくれる気がした。
「そろそろ買い物にでも行こうかな。これを楽しみでこの船予約したんだし」
この旅は、次の乗り換えがあるまで豪華クルーズ船にした。
買い物に行こうと振り返ったその時だった。
「きゃっ!」
「あっ、すみません」
後ろに人がいたのに気付かず、思いっきりぶつかってしまう。
「こ、こちらこそすみません。ご無事ですか? あっ」
ぶつかったのは背の高い男性で、スーツにコーヒーが溢れていた。
「うわわっ、本当にすみません。えっと、ちょっと待って下さい」
鞄の中からハンカチを取り出す。
「すみません、失礼します」
胸から腰まで垂れてしまったコーヒーを慌てて拭いていく。
しかし、もうすでにコーヒーが染み込んでしまっていた。
「あぁ……。すみません、弁償させていただきます」
「あぁ、いえ。これくらい気にしないで下さい。ぶつかった僕も悪いので」
背の高い男性は、爽やかな笑顔を浮かべた。
綺麗な肌に、深い黒色の髪。目元が整っており、どこか気品を感じさせる。
男性は短く頭を下がると、背ろにいた人達に振り返った。肌の色も様々で、人種はバラバラなようだ。
「Ydy hi'n broblem os yw fy nillad yn fudr?」
「……?」
何語かわからないので全く聞き取れない。何を話しているのかも全くわからない。
首を傾げていると、少ししてから男性が振り返った。
「こちらの方々も何も問題ないそうです。なので、貴方も気にしないで下さい」
「え……。ありがとうございます」
「それでは」
男性は丁寧に頭を下げると、後ろにいた人たちを連れて去っていってしまった。
何故か、その男性のことが気になった。目の届く範囲で見続けたが、すぐにどこかへ消えていってしまう。
「…………礼儀正しいし、かっこいい人だったな」
妙に印象に残る目だった。瞼を閉じれば、あの男性の顔が思い出される。
とても素敵な人だったが、もう会う機会もないだろう。
頬に熱が集まるのを感じていたが、頭を振って忘れることにした。
ここはどこだろうか?
体が痺れて全く動かない。目隠しをされているのか、視界もずっと暗いままだ。
何も上手く聞こえず、何を言っているかわからない。しかし流暢な男性の声は聞こえていた。
「それでは、オークションを始めさせていただきます。二万ドルからスタート!」
「一千万ドルだ。一千万出そう」
以前聞いたことがある男性の声が聞こえて、私の意識は再び混濁し始めた。
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「ふぅーっ。潮風が気持ち良いーっ」
私は今、旅行に来ている。
ブラック企業、業務量過多、度重なる飲み会、人間関係、上司からの理不尽な要求――などなど。
などなどが積み重なり、膨れに膨れ上がって爆発。倒れる寸前で退職届を書き、此度無事に退職できたという訳だ。
(次のお仕事決まらないまま退職しちゃったけど……、別にいいよね。旅行から帰ったら次のこと考えよ)
船の甲板の上で自嘲する。
青い海と青い空は、悩みなんて全部かき消してくれる気がした。
「そろそろ買い物にでも行こうかな。これを楽しみでこの船予約したんだし」
この旅は、次の乗り換えがあるまで豪華クルーズ船にした。
買い物に行こうと振り返ったその時だった。
「きゃっ!」
「あっ、すみません」
後ろに人がいたのに気付かず、思いっきりぶつかってしまう。
「こ、こちらこそすみません。ご無事ですか? あっ」
ぶつかったのは背の高い男性で、スーツにコーヒーが溢れていた。
「うわわっ、本当にすみません。えっと、ちょっと待って下さい」
鞄の中からハンカチを取り出す。
「すみません、失礼します」
胸から腰まで垂れてしまったコーヒーを慌てて拭いていく。
しかし、もうすでにコーヒーが染み込んでしまっていた。
「あぁ……。すみません、弁償させていただきます」
「あぁ、いえ。これくらい気にしないで下さい。ぶつかった僕も悪いので」
背の高い男性は、爽やかな笑顔を浮かべた。
綺麗な肌に、深い黒色の髪。目元が整っており、どこか気品を感じさせる。
男性は短く頭を下がると、背ろにいた人達に振り返った。肌の色も様々で、人種はバラバラなようだ。
「Ydy hi'n broblem os yw fy nillad yn fudr?」
「……?」
何語かわからないので全く聞き取れない。何を話しているのかも全くわからない。
首を傾げていると、少ししてから男性が振り返った。
「こちらの方々も何も問題ないそうです。なので、貴方も気にしないで下さい」
「え……。ありがとうございます」
「それでは」
男性は丁寧に頭を下げると、後ろにいた人たちを連れて去っていってしまった。
何故か、その男性のことが気になった。目の届く範囲で見続けたが、すぐにどこかへ消えていってしまう。
「…………礼儀正しいし、かっこいい人だったな」
妙に印象に残る目だった。瞼を閉じれば、あの男性の顔が思い出される。
とても素敵な人だったが、もう会う機会もないだろう。
頬に熱が集まるのを感じていたが、頭を振って忘れることにした。