蝉の声が続く森

蝉の声が続く森

蝉の声がどこまでも煩い8月13日。
お盆の入り。
父は万引きをした。
おばがすぐ電話で駆け付け、泣き崩れた。
「なんで謙二が…」
警察の人に父は色々聞かれ、少しの間、警察署にいた。
どうやら、頭がぼーっとして電池を取ってしまったようだ。
その時の事は、本人はよく覚えていないらしい。
精神科にかかった方が良くないか、と警察に勧められた。
そして、「娘さんがかわいそうだねえ」と警察は言った。
「この事をなかった事にするには、お金が必要だね。でなければ、ずっと刑務所に入る事になる」
母はお金を払った。

***

その夜、私は夢を見た。
近所の人達に私はヒソヒソ言われていた。
振り返ると父がいて、ニヤッと笑った。
その瞬間、小さい頃に感じた父の匂いがした。
「はっ!!!」
慌てて飛び起きた。
「夢か…」と同時に、「おえっ」吐き気がした。
あの父の匂いがまだ私の中に残っていた…。

***

朝食を食べようとリビングに向かうと、何やら母と父が口論になっていた。
万引きの事らしい。
私が部屋に入るなり、父が、
「もとはと言えば、一二美のせいだ!一二美が高校を辞めて、通信まで辞めていなければ!俺は…!!!」
!!!
父に顔を殴られた。
鼻から血が出た。
「お父さんっ!」母が心配して私に駆け寄って来る。
どうやら父は、私が私立高校を辞め、その後、通信高校を辞めた事で莫大なお金がかかり、それで精神的におかしくなっていたらしい。
父が会社を辞めさせられた事もあり、家はお金がなかった。
私も、発達障害で高校で上手くいかなかったという事が後で分かった。
でも、父にしてみれば、理解出来なかったのだろう。

***

8月16日。お盆の出。
私は、玄関を出た所で蝉の死骸を見つけた。
ここら辺は、森と一体化していて、まさに、森に住んでいるかのようだ。
私は、ハンカチを出し、蝉をそっとその上に優しく乗せた。
「かわいそうに…」

***

少し深く森の中に入り、スコップで穴を掘り、蝉をその中に埋めた。
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