ワンコなふりしてドSだなんて、どういうことですか!
『深結さん、もう少し福利厚生が整っていくところに行きたいなって言ってましたよね? ここ、看護師の待遇がいいんですよ』

 募集かける前に、ひなちゃんが一足先に声をかけてきてくれたらしい。

 彼女が話してくれた内容は、確かに魅力的だった。
 夜勤手当が厚く、残業はほぼ発生しない体制が整っている。ユニフォームは病院支給で枚数も十分あり、クリーニングも病院負担だという。院内保育も完備していて、子育て中のスタッフも多いと聞いた。福利厚生がしっかりしているぶん離職率も低いらしい。

「その話、返事は急ぐ? よね?」

『それはそうなんですけど、一週間以内くらいでどうですか?』


 そう応えたときにはもうほとんど転職を決めていた。

 どこへ行っても過去は変わらないし、思い出は消えないとわかっている。
 それでも、少なくとも廊下の向こうを確認しながら歩かなくて済む場所で、もう一度ちゃんと仕事に向き合いたい。

「わかった。前向きに考えてみる」

『やったー! じゃあ詳しい話をしたいから会いましょうよ』

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