恋なんて、彼の特権だと思っていた
 毎週土曜、その男のコは私の前に現れる。

 ライトアップされた東京タワーが小さく見える。
 電気を消した室内で、真琴くんは後ろから私を揺らすのが好きだ。

「友里愛(ゆりあ)さん……!」

 息を切らしながら、重なるように私の背中に抱きついた。
 彼の黒い髪がくすぐったくて、笑いそうになるのを我慢する。

 そして、枕元に置いていたスマートフォンを引き寄せて、私は告げる。

「そろそろ0時よ」

「そっか。帰るね」

 若いってすごい。
 こっちはヘロヘロだっていうのに、服を着込むと笑顔で敬礼をした。

「ごちそうさま。またご飯食べさせてね!」

 返事もろくに聞かずに、真琴くんは部屋を出ていく。
 私は乱れた髪を掻き上げながら、その後ろ姿を見送った。

 ――また来週って思ってるんだろうな。

 私は彼にとって、都合のいいオバサンだった。

 
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