キスするくせに、彼氏じゃない。
転びそうだったからでも、たまたま近かったからでもない。

私は目を閉じて、袖を握ったまま、その短いキスを受け止めた。

 

離れたあと、何を見ればいいかわからなくなった。

 

床。

彼のネクタイ。

つかんだままの、自分の手。

 

律も、すぐには動かなかった。
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