【長編】ホタルの住む森


一生懸命思い出を話す彼女を、思わず腕の中に閉じ込める。


うん、知ってる。


覚えているよ。


驚いて目を見開く彼女は、あの日僕を見て振り返った少女のままだった。


君は約束を守ってくれていたんだね。



瞳を閉じる…


想いが重なる…



その少年が僕だと知った時、彼女はどんな顔をするだろう。


唇に触れるあたたかい想いを感じた時、赤紫の傘は茜の手を離れ雨に濡れていた。


紫陽花に寄り添うように


二人が隠れていたあの日の傘のように


** 銀糸の午後 紫陽花の夢…11年後 Fin **

< 101 / 441 >

この作品をシェア

pagetop