【長編】ホタルの住む森

目覚めのとき


   
いつも見る夢がある。


なだらかな丘を登った先にある赤い屋根の家。

私の大好きな人が住んでいる。

その丘はいつも四季折々の花々に囲まれ、いつも美しい。

春には桜の並木が家までのスロープを彩り、夏には向日葵が咲き乱れる。

夏の夜空の宝石たちは今にも降り出しそうでいつも私を魅了する。

金色の草木が丘を黄金に染め上げる秋は、夕日に染まるその景色の中に揺れるコスモスがとても儚げで幻想的だ。

そして、やがて来る一面の銀世界。

私はこの季節が一番好きだった。

窓から覗く白銀に染まる丘が、朝日を受けて輝くのを見るのが大好きだった。


愛しい人がいる。


振り返ると笑ってくれる。


とてもとても愛している。


切ないくらいに愛している。


――あなたは、だれ?



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