【長編】ホタルの住む森

愛しい影


暁は自室の窓から、今にも泣き出しそうな空を見上げて溜息を吐いた。

雨を予感させる雲は、今朝より更に成長し、徐々に近づいてきている。

暁の落胆とは裏腹に、庭の紫陽花は天の涙を心待ちにするように花を揺らした。

この様子では今日のサッカーの試合は雨の中は確実だ。
天気予報が正しければ、最悪中止となる可能性も否めなかった。

窓を開け大きく身を乗り出し空を仰ぐ。

雲の流れの先に、天候回復の兆しが無いかと望みを掛けてみるが、その願いも虚しく、厚い雲の層は相変わらず太陽の光を僅かにも漏らすまいとするかのように広がっていた。

雷雨にならないことを祈りながら窓を閉めようとしたとき、彼はその人影がまだそこにいることに気付いた。


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