【長編】ホタルの住む森

あかね



あれから1年……


幸福が訪れるという花言葉の通り、すずらんの咲き乱れるこの丘には天使が幸福を運んできた。

小さな鈴の揺れる白い絨毯を、晃は陽歌を伴ってゆっくりと歩いていた。

新緑の葉が風に舞い、やさしく子守唄を奏でている。

頭上にはあの日と同じ茜色に染まる空が広がっている。

雲の切れ間から金色に細く伸びる光の筋が、徐々に赤みを増し、西の空へと姿を沈めようとしていた。

少し寒くなった風から庇うように、晃は陽歌を抱きしめる。

陽歌は幸せそうに晃の胸に頬を寄せ、腕の中の小さな存在に微笑んだ。


「ほら、朱音(あかね)お空がとっても綺麗よ」


沈みゆく太陽は、空を金から赤、朱から紫へと色を変えて染め上げる。


朱音の瞳に映るもの…


それは未来へ広がる限りない希望。



++ Fin ++



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