【長編】ホタルの住む森

Side 晃


茜が静かに部屋を出るのを気配で感じ取る。


追いかけようとは思わなかった。


今の茜を追いかけて無理矢理捕まえても、また逃げようとするのがわかっているから。


腕の中に残った感触とまだ温かいシーツを抱きしめて昨夜の事を振り返る。

細い身体をしならせ、桜色に上気した肌で僕を受け入れ全身で受け止めた茜。


―― 晃…あなたを…永遠に愛してる… ――


何度も何度も繰り返し響くその言葉を、柔らかな絹で包み込むように、大切に胸の奥で抱きしめる。


僕は追いかけないよ。


君が僕を恋しいと何度も思い出し、切なさにその身を焦がすまで。


苦しくて僕がいないと片時も生きていられなくなるまで。


君の心が僕を求めて止まなくなるその時まで僕は待つことにするよ。


それはそんなに遠い日ではないのを僕の心は確信しているから…


その時こそ待っていて。


必ず君を迎えに行く。


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