素直になれたら

5.加藤勝希


昨日と同じ様な星空が、頭上で瞬いていた。

無性に外気に触れたくなって、俺は夜な夜な近所を徘徊している。

携帯がないと、誰かと繋がっている術をなくしたような気持ちになって、それはそれで少し虚しい…。

ここいらの近所は住宅街なので、21時以降出歩いている人影は少なく、夜の街に一人、取り残されているような錯覚にも陥る。

そして馳せるのは、彼女の井阪ゆりの事だ。

ああもあからさまにシカトされたのは初めてで、矢張り…戸惑う。

それは三日前の放課後だ。
自分でも間抜けだと思うが、便所に携帯を落としてしまって、それでおしまいになった訳だ。
最近は防水に長けてる携帯も出ているが、俺のは生憎そんな性能付いていない。
便器の水溜まりに手を突っ込んで取り出したそれは、電源を押しても液晶に灯りは付かなく、完全に事切れていた。

俺らは毎日、夜にはメールのやりとりはしていた。当初は少し煩わしいとも思ったが、ゆりはメールっ娘なので、合わせながらやってくうちに、それが日課みたいなモンになっていた。

携帯が使えたら、今の時間はメールか電話のどっちかはしてただろうな…。
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