素直になれたら

3.井阪ゆり

放課後になった。

1、2年生はこれから部活に精を出す時間帯。ついこの間までゆりも校庭を駆け回っていたんだけどな……。
ゆりはね、こう見えても陸上の短距離選手だったんだ。そりゃあ特別好成績を収めたり、県大とかに行った記憶はないけどさ、運動して汗かくのはスゴく好きだった。

だから引退がちょっと寂しかったりするんだよね…。
て言うかまだかなぁ〜…
D組はHRやけに長いからなぁ…

そんな事を思いながらゆりは、背中の真ん中まである長い髪を結んだ。乱れのないセピア色の直毛でアンダーツインを造った。
ゆりのこの髪は密かに自慢なんだよね〜。
間もなく、D組の生徒達が無造作に教室から出てきた。

「ゆりごめーん。結構待ったでしょ」

と言いながら美嘉が教室から出てきた。

これから一緒に『フレッシュ』に行く予定。

昨日ゆりはお腹減ってハンバーグとクラブサンドとストロベリーパフェを食っちゃって…。
デザートはクレープシュゼットとすんごく迷ったんだけど、パフェの豪華な佇まいに根負けしちゃって…。

だから今日は絶対食べるんだ!!

「大丈夫よ。じゃあ行こっか」

「うん」

美嘉はゆりの自慢の友達の1人。ゆりもよく可愛いって言われるけど、美嘉もすんごく可愛い。美嘉は1年の時同じクラスになって、ゆりがまだドン臭かった頃からオシャレだった。
メイクも上手だし、細いし…まぁ胸がないのが玉に瑕?…っていけないいけない。

「でもあんまり食べると太るからなぁ〜」

ゆりも細身だけどやっぱりそれは心配。

「まだウチらは一線越えてないからいいって」

「だよね〜」

その時、右肩に何かがのし掛かった。

なに?

「なになに。2人でどっか行く訳?」

なんだ。

見ると、翔がゆりと美嘉の肩に両手を組んで楽しげに話かけてきた。
美嘉はちょっと呆れた顔をしている。てっきり翔は今日一日中テンションがた落ちだと思ってたんだけどだいぶ元気じゃない。

翔は美嘉のダーリン。去年の新学期くらいから付き合ってるんだっけ?
ゆりは1年の時翔と一緒のクラスだったからわりかし付き合いは長い。
妙に耳が尖った人だなぁ…てゆうのが初めて見た時の印象。
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