奴のとなり



毛穴から汗が噴き出すのが分かる



「ささっ、皐月さんっ!!!」



「だって〜、折角桜ちゃんが来てくれたのに寂しいじゃない」



「いやいやいやっ」



来てくれたって行き倒れですが!



寂しいって言ってくれるのは嬉しいけど、先生が恐い



それに小悪魔さんも心配してるだろうし



ケイちゃんも…まぁいいけど



とにかく、帰らないと



学校には行かないと



「皐月さん…、あたし帰らないと」



動揺が出るに出すぎているらしく、口が上手く動かない



皐月さんは、う〜んなんて言うと閃いたように口元を緩めた



「学校には行けばいいんでしょ?なら、荷物だけ取りに行って、うちに戻ればいいわよね〜。また倒れるかもだし、お家誰もいないんでしょ?私、心配だもの〜」



名案とばかりに、皐月さんは嬉しそうに口を挟む暇なく喋る



「ここで帰して、また倒れたりしたら、私自分が許せないもの」



少し目が真剣な雰囲気があって、あたしは何も言えなかった



皐月さんのところにいると、奴のこと少しは思い出さないし



皐月さんと綾子さんといるのは楽しい



「受付の子、辞めちゃったからちょっとしたバイト代わりにもね」



受付は楽しい



いろんなお客さんとお話しながら、素敵に変身して帰って行くのを見れるし



こんな時に、誰もいない家に帰るのも嫌だった



余計なことを考えちゃうから



あたしは、こくりと頷いていた



このことが大切な人を傷つけることになるなんて知らずに














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