奴のとなり







目の前が真っ白に染まって



体が傾く



このまま、壊れてなくなっちゃえばいいのにって考えながら、床が見える



その瞬間、温かいものにすっぽり埋まる



「悪い」



たった一言が頭上から、いや、顔のすぐそばから聞こえて、あたしの涙腺はまた決壊した



二人倒れ込むように壁にもたれながら床に落ちて



あたしは奴の胸をたたき続けた



「きっ嫌い〜!!大嫌いぃ〜っ!!」



奴の手があたしの髪を撫でる



おでこに奴の前髪が触れて、くすぐったい



「悪かった。だいぶ待たせた」



「きらいぃっ」



「嫌いでいい。俺は桜が好きだ」



「知らない!!」



「好きだ」



視線が絡む



切なげな奴の目があたしを映す



どうしてなんだろ



どうして、ずっと怒ってられないんだろ



奴の指があたしの涙を掬う



ひとつ



ふたつ



こぼれた数だけ優しく












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