奴のとなり
目の前には、少し来てなかっただけなのに、とっても昔に来たんじゃないかってぐらい懐かしさのこみ上げる場所
くろちゃん
桃矢くんは立ち止まることなく暖簾をくぐる
「いらっしゃいっ!!」
中から元気な、大好きな声
おばさんは奥から顔をのぞかせると、すごい勢いで突進してきた
「よく来たね〜っ!!顔見せないから心配したよっっ!!!!」
耳がキーンとほど大きな声でおばさんはあたしを抱きしめた
「ごめんなさい…」
「さぁ、よく顔見せとくれ!かずちゃんに泣かされてないかい?すぐおばさんに言うんだよ!!」
相変わらずのマシンガントーク
当たらずも遠からずな言葉に笑みが零れる
「おばさん大好き!」
「ややっ!かずちゃん、桜ちゃんを嫁に欲しいよっ!!」
ぎゅうぎゅう
おばさんの愛情と比例して抱きしめられる手の力が込められる
すでにカウンターに腰掛けてた桃矢くんは顎に手を置いたままあたしたちを一瞥する
「それはねぇな」
「だよねぇっ!!」
「まぁ、かずちゃんも私の息子だから、その嫁になる桜ちゃんも娘ってことになるよねぇ」
「まぁ」
あたしの顔が赤くなるのが分かる
だって、よく聞いてみれば冗談にしても恥ずかしい
娘だって言ってくれるのも
嫁って言葉を否定しない桃矢くんにも
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