奴のとなり



いつの間にやらあたしはケイちゃんの話に聞き入っていた



聞いても損はしないだろう



謎な講習会はそれから間もなくして打ち切られた



「お前ら、何の話してんだ」



低い魔王な声が響いたおかげで



桃矢くんの声を聞いた途端、ケイちゃんは忍のようにドロンと消えて、気まずい空気の中2人になる



「なんかね、気になってたんだけど…。今日、あたしと桃矢くんはするの?」



「……」



桃矢くんでもこんなに固まってびっくりするんだ



ってぐらい固まったまま動かない



そりゃ、あたしの質問が馬鹿げてるって自覚してるけど、するならするで覚悟っていうか心の準備がいるでしょ



やたら朝から小悪魔さんやらケイちゃんやら、そういう雰囲気出してるし



なんで2人が桃矢くんのそういうとこを感じとってるかは分からないけど



「桃矢くん?」



「お〜い?」



「桃矢っ!」



呼びに呼んで、桃矢くんは遠くから帰ってきたらしい



はっとしたように、いつもの桃矢くんに戻った



「んなこと聞くんじゃねぇよ」



「だって心の準備がいるんだもん」



しばらくおとなしくなった桃矢くんは、さっきまでの桃矢くんじゃなく



「桜はどうしたい?」



妖艶な笑みを浮かべる魔王様になっていた



さっきまでの桃矢くんはどこへやら



今度はあたしが固まる番













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