奴のとなり















「桜?」



「桃矢くん…」



ど、ど、ど、ど……



「どうした?」



訝しげな桃矢くんが、心配そうに腰を上げてあたしに近づく



どどどどどどど……



「それ以上近寄らないでっ!」



ちょっと大きなあたしの声を、桃矢くんは驚きながら聞いていた



なんか変だ



さっきから心音がやたら早い



しかも桃矢くんが近づくのに比例するみたいに早くなる



「なんか変」



「……何が?」



「やばいっ!早いっ!」



「……」



昨日あんなに近くにいたくせに、今どうしようもない感じがする



「なんか、桃矢くんにドキドキしてるらしい」



「ん?」



「今さら、桃矢くんが格好いい気がする」



「……」



だって!



さっきから妙にキラキラしてるんだもん



やたらめったらキラキラ振り撒いてんだもん



今さらあたしに



「あっ!!桃矢くんが今まで格好悪いとかじゃないよ!?今日が何時にも増してというか…」



「ぶっ」



前から聞こえる吹き出し音に、顔を歪めながら桃矢くんに向ける



桃矢くんは楽しそうに笑いながら、席についた



ひどいっ!



人が初めての感覚に動揺してるっていうのに










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