奴のとなり



それから1週間、あたしの体調はすっかりよくなり、いつもの日常を取り戻しつつあった



ただ…、みんなが可笑しいことを除いて



リンゴ様事件から、小悪魔さんは妙にあたしに厳しい



ケイちゃんは過保護



ナナミさんは愉しげで



桃矢くんは心此処に在らず状態で、何かを考え込むようなことが多くなった



一体何事なんだろうか



いつもと変わらない火曜日



あたしと桃矢くんは2人でいつもの帰り道を歩いていた



この時も、桃矢くんはどこか変で、話の途中上の空になったかと思えば、いつも以上に優しかったりする



変なの…



「桜、おばさん次いつ帰ってくる?」



「ええっ!?…と、明日は久々の休みだって。家でごろごろするって言ってたよ?」



「……。明日、桜んち邪魔する」



「ん?うん。お母さん喜ぶよ」



突拍子もない話の展開にあたしは呆気にとられた



何考えてんだか



お母さんも桃矢くんを可愛がってたし、桃矢くんも面白いって笑ってたから、久しぶりに会いたいのかもしれない



なんて、考えてると、いつの間にか立ち止まっていたらしい桃矢くんの背中で顔をぶつけた



「ぶっ!どうしたの?」



意地悪でトリップしたあたしをぶつからせたのかと思った



にしては、桃矢くんは鼻で笑ってこない



綺麗な眼が、あたしをじっと見つめていた



「桜に聞きたいことがある」



いつになく真剣な眼差しは、あたしの動きを鈍らせた



ゆっくり頷くと、桃矢くんは壁にもたれて髪を手でくしゃりと乱す



「最近体調悪かったろ。何でなんだ?」














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