優しい檻
「――留学…」
「悪いけれど、調べさせてもらったわ。先生、不倫していたんですって?」
―頭痛がしてきた。
「俊一とはどうせ本気で付き合ってはいないんでしょう?
あの子は才能がある子です。つまらない恋愛なんかしている場合じゃないのよ。」
「つまらないなんて…」
「先生ならきっとあの子の幸せを考えてくれますよね?
それと、真理のレッスンはそのまま今の先生にお願いすることにしました。
じゃ、失礼します。」
ツーツーツーと、電話の無機音がしばらく鳴っていた。