ユキの奇跡

これからの、私。

 「ハナ、ほら、笑って!」
 「ユキ!」
 
 あっという間だった。ユキは笑顔だけ残して消えてしまった。
 
 「ユキ…あたし、これから一人でどうしたらいいの」
 
 空を見上げる。答えてくれる声はない。街の灯が滲んで見える。
 遠くから、見慣れた姿が近づいてきた。
 
 「ごめん、遅くなって…どうしたの?」
 「ユキが、ユキが居なくなっちゃったの!」
 「ユキ…?」
 
 私は悲しさでいっぱいで、あふれ出る気持ちを抑える事が出来なかった。
 私は、今までの全てを結城君にぶちまけた。
 悲しかった、毎日のこと、ユキとの毎日のこと…。
 
 「私、独りに耐えられなかった。友達もいなくて、そんな毎日が辛くて…鏡の中の自分をユキって呼んだ。それから、ユキは私に話しかけてくれるようになった」
 「一人が、寂しくて…」
 「うん…。あたしは今までずっと、ユキと一緒だったの。これからも、ずっとそうだと思ってた」
 「そうか。それで、泣いてたのか…」
 「だって、私独りじゃ、なにも出来ないもの」
 「そうかな?俺、高木さんの笑顔、いいと思うよ」
 「え…?」
 「高木さんと喋ってると楽しいよ?俺、高木さんのこと好き…なんだけどな」
 「結城…君」
 「俺じゃ、ユキちゃんの代わりにはなれないかもしれないけど、高木さんを守りたいな。自信や勇気をあげたい」
 「あり、がとう…」
 「結城だけに、勇気をあげるとかって…」
 「え?あ…ふふっ」
 「あ、笑った!よかった~くだらないとか言われたらどうしようかと思ったよ」
 
 結城君は嬉しそうに笑った。
 
 「じゃ、行こう!」
 
 結城君が私に手を差し出した。
 
 「うん!」
 
 私はその手を握り返す。
 手を繋いで、歩き出す。
 
 『ほら笑って!』
 
 ユキの声が…聞こえた気がした。 
                  おわり
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