我妻教育
転入以来ジャンは、学業や運動の成績など何かにつけて、私に張り合ってくる(無論私は常にトップを守り続けているが)。

どうやら、以前の学校では、何においても一番だったのが、我が学院に来てから二番手に甘んじていることに納得がいかないようだ。


図々しくも勝手に、私のライバルであると豪語しているばかりか、
友人だと認めたわけではないのに、勝手に友人だと言って、馴れ馴れしく付きまとってくる。



「で、お相手はどんな方ですの?」

ジャンが離れるのを見届けると、琴湖は話を戻した。
笑っているのは、口角だけだった。目をすえて、じっと私を見ている。

「ああ、相手はカキツバタ商事の令嬢だ」

私がそう答えると、琴湖の片方の眉がぴくりと動いた。

「…カキツバタ商事ですか…。それは、ご立派なお家ですこと。
お嬢様は、おいくつなんですの?」

「17歳だ。うちの高等部に通っている」

「じゅうなな!?」
琴湖は、びっくりした声を上げた。
そして耳を疑うように、目を大きく見張って数回まばたきをしている。


…確かに驚くのも無理はないが。


ちょうどそのとき、始業のチャイムが鳴った。


何か言いた気な表情を私に投げかけつつ、琴湖は席に戻った。



私は、何気なく窓の外、遠くに目をやり、未礼が腹をすかせていやしまいかと、ふと思った。





「紹介して下さいません?」

放課後。

帰り支度をしていると、今朝とは打って変わって、機嫌の良い顔で、琴湖が言う。


「今朝は、不機嫌な物言いですみません」
言いながら琴湖は、しおらしく首を傾けた。

「ただ少しさみしかっただけですわ。
おめでたいことも、何でも、私は一番に教えていただける、友人だと思ってましたから…」


「そうか、済まなかった。
ただ、秘密にしていたわけではないのだ。
ほんとうにまだ正式に決まったわけではないから、言わなかっただけだ」

「ええ、わかってます」

そして琴湖は、ふせていた瞳を、切り返すように私に向けて言った。

「よろしければ、是非お会いしたいですわ。
カキツバタのお嬢様に。紹介していただけません?」


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