我妻教育
「う~~~~~ん・・・」

中間考査真っ只中の未礼は、テーブルにノートと参考書と乳を載せ、シャープペンをくわえて唸っている。



婚約者の未礼とともに生活を始めてから二週間が過ぎた。


私の自宅に、未礼の私物が増えていくのと比例して、ここでの生活に、未礼も、そして私も馴染んでいくのを実感していた。


ようやく私も新しい本に取り掛かることが出来るようになった。
今読みはじめたのは、医療現場を舞台としたミステリー小説だ。


読書はいい。

しばし一人、別の世界に心を飛ばし浸ることが出来るからだ。

だが、なかなか集中出来ないでいる。



「肩凝ったぁ!もう疲れた!!」

「…何を言ってる。まだ10分もたってはおらぬぞ」
私は、本越しに呆れて言った。


「じっと勉強してるのムリ!」
駄々をこねる子どものように、未礼は勢いよくブンブンと首を左右にふって、広げたノ
ートの上に突っ伏した。



読書は一人自室でするに限る。

だが同居の名目上、家にいる間は出来る限りともに過ごすようにしているのだ。

テーブルとテレビの置かれたこの簡易の居間で。

未礼も、寝る以外のほとんどを寝室として与えた隣の和室よりもこちらの居間で
過ごしている。



「いィーーたたたたたたァァァ!」


どうやら休憩と称してテレビをつけようと、横着して足でリモコンのスイッチを押そうとした結果、足がつったらしく、のた打っている。


・・・この本も読み終わるのに時間がかかりそうだ。

本を閉じ、仕方なしに、処置をしてやる。

「イぃーーたたたたぁぁーー!!
痛いイタいよ啓志郎くん!
いたたた……はぁー、マシになってきたぁぁぁりがとぉ」

「自業自得というものだ。
なにより、足で電源を入れようなど、はしたないことはするものではない」

「だってぇ、足のが手より長いんだも~ん」

そう言うと未礼は、リモコンと菓子に手を伸ばした。

ついさっき夕食を食べたばかりだというのに。
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