実の弟に恋をしました。
涙はとっくに枯れて。
あたしは、陸の肩にもたれるようにして、ソファーに寄りかかっていた。
「…ねぇ、陸?」
「なに?」
「さっき、どうしてあたしの場所が分かったの?」
「…あー…踏み切りの音。と、ハチの鳴き声?」
ハチ、とは、商店街の八百屋さんで飼っている、看板犬のゴールデンレトリーバー。
啜り泣くあたしの後ろから、ハチの吠える声が聞こえてきたのだと陸は言う。
「…そっか。一瞬、エスパーかと思っちゃったよ」
「ははっ。……でも、本当にそんな力があったらいいのにな」
「…え?」
「そしたら…すぐに姉貴のこと、助けてやれるのに。守ってやれるのに…っ!」
グッと、膝の上で拳を握る陸。
その横顔は、誰よりもたくましくて、凛々しくて。
つい、見惚れてしまう。