記憶を持つ者
「…どうした?」
無意識に顔を見つめていた私は、そう尋ねられて慌てて顔を逸らす。
「い…いえ、何でもないです。はい。」
「私に興味があるのか?」
「いや、そんな…。―――え?」
俯いて答える私の顎に手をかけ、上向かせた魔王は、
「私のモノになれば、何者にも襲われずに済むぞ。」
と言った。
…からかうような瞳で。
なのに、目が合った瞬間から、全く身体が動かない。
息すら苦しくて。
「―――レン…ッ!!手を放せ!!!」