工場裏の宇宙ネコ
「すまん!ココロちゃん!
 余りにそれが綺麗でね‥つい‥」

『大丈夫!
 ちゃぁんと戻って来たからいいの』

「工場長?
 ココロがこのコバルトを持っていたって事は
 やっぱり、あの星のものなのでしょうか?」

工場長はギクリとした

「そ、それはどうかな
 私も最初から見てた訳じゃないからね」

匂う‥匂うぞ

そもそもこの工場長なら、心を読めるココロでなくとも色々と読めてしまうのだけど。

「あれ?
 博士が工場長が立ち会っていた、と言ってましたが違いましたか
 仕方ない、当時の関係者を一人っつあたってみようかな‥」

「アァッ!
 そうだそうだ、立ち会ったかもしれんな
 ハハハ‥昔の事なんでなぁ」

「あ、良かった思い出しましたか
 すると、これはやっぱりあの星の?」

「そう‥
 その楽器はココロちゃんが‥この星に来たときに持っていたものだよ
 ホントにスマン!

 ついね‥すぐいけない事に気がついて、部下に戻すようにって渡したんだ
 ちゃんと戻してくれると思ってたんだけど、まさか売ってしまっていたとは‥」

…さっきは部下にあげたって言ってた様な

それに、部下にも戻せなんて言ってなかったんだろうな。
そう思ってたなら、最初にコバルトを見た時点で戻った事を確認出来てるはずだから。
本当に部下に渡したのかも怪しいけど、これ以上は突っ込まないでおこう。

それにしても、あの星の物質は、あの星が消滅した事で存在出来なくなっているはずだ。
しかし、コバルトは今ここに存在している。

──これは一体どういう事だ?

もしコバルトが本当にあの星のものだとしたら、夢で見たあの知らない顔が持っていた六弦は、このコバルトなのかもしれない。

ココロの記憶が戻っていない今の状況では、あの夢を裏付けるものは何もないんだけど。
もし、ボクが思っている事が全てその通りなら‥
ボクはひどく胸騒ぎを感じた。

ボク達の物語の歯車は、加速度を増して回転していく様だった。
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