来る来る廻る


最後に眉間に皺を寄せ…キリッとした表情を見せて準備完了。

後ろに立っていた私は、鏡の中の直也と目が合った。

「亜紀子、明日さ、ゆっくり飯でも食いに行こうよ」

「えぇぇ?本当に?」

心が踊った、体が宙に浮きそうになった。

「直也、本当にいいの!私、嬉しい…」

「仕事も休もうと思ってんだ、飯食ってバー行って、たまには外で泊まろうか」

嬉しくて嬉しくて…涙が込み上げてくる。

思わず…その背中に抱きつきたくなったが、後ろから肩に手を乗せるだけにした。

瞬時に思いとどまったの……。

なぜ?って…これから出勤前の直也に女の匂いをつけては、ホスト本命馬としては…失格だから……。

ちゃんと心得ているから、だって私は選ばれし女だし…これからも頑張る…直也に見捨てられたくないもん…。

約束の日が来た…。

私は昼から仕事を早退した。

待ち合わせ時間は夕方だったけど、仕事が終わってから待ち合わせ場所に走るなんて…ぎりぎりの状態で急ぐなんて…ちっとも綺麗な容姿で直也に会えない。

家に帰り、ゆっくりお風呂に浸かり…マッサージにパック……。


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