悲しみと魔法と、そして明日と
プロローグ
――ここは聖なる大地セイクリッド・グラウンド。

五つの大陸を擁する、剣と魔法と武力が支配する世界。

五人の賢人と四人の王が統治するこの世界は、戦争や厳しい格差を孕みながらも、魔耀石[まようせき]と呼ばれる魔を有する鉱石を利用した興業や学問の発展や努力もあり、人々は今を生きながらえていた。


その今より15年前の遥か東にある街で。

焼け崩れてしまった家の前。小さな拳を握り締め、血を滲ませながら。

死体が流れる河川敷。自分より幼い弟妹たちを抱きしめ、曇り空を仰ぎながら。

その悲しみに満ち溢れた様子。口の端を吊り上げ、見物する欲深い者たちを隣に見上げながら。


僕は、



僕たちは…





この世界に絶望した。
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