ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】


「………もしもし?………どした?こんな真夜中にかけてくるなんて、珍しいな」

「………ノブ………」

「ん?」


「お願いがあるの………」


「―――――あたし、ノブが生まれ育った所に連れてって欲しい………」


いつもの勝ち気な茉莉子の声ではなく、息を吹いたら消えそうな………。

茉莉子から俺に頼むなんて今まで一度もなかったから、不安感が過ぎる。

心配になり、俺は
「何かあったのか?元気ねぇぞ…」
と、訊く。

「ううん………大丈夫。今見てた雑誌に“SENDAI光のページェント”の事が載ってて………この目で見てみたい…って思ってね」


「―――――すげぇキレイだよ。なんつーか………天国みてぇだよ…ってか俺、天国見たことないのに」


電話の向こうで、くすくすと笑い声。


「―――――じゃあ、クリスマスイブ、仙台へ行こう。俺から茉莉子へ。今までのお礼させてくれ。最初で最後のお願いだから……な?いいだろ?」




暫く、無言が続く……………。



俺は一口タバコを軽く吹かし、灰皿の底に押し付け、火を消した。





「…………うん。わかった。クリスマスイブ、空けておくね………」


「ありがとう、茉莉子。時間と待ち合わせ場所は、調べて後で電話する」




こうして、茉莉子とクリスマスイブに仙台へ行くことになった。


イブ当日まで、落ち着かなかった………俺。


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