ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】


オーダーした琥珀色の想いが、テーブルに揃う。


俺は暫く、グラスの縁を目の高さまで持ち、眺めた。


琥珀色の小さな海。


その中を漂う氷の塊。


グラスに軽くぶつかっては、“カラン………”と、切ない音色を響かせた。




「―――――水嶋が大学校へ行くまで辺りは、今までにないくらい幸せだったんですね、彼女は………」


シゲさんが呟く。


解らない。
俺には解らない。


俺の家族も、エリの家族も、淳子さんたちM-Blowのスタッフも。

みんな、両手(もろて)挙げて喜んでて。


俺が大学校へ行って、東京と仙台の遠距離恋愛になったけど、寂しくなかった。


卒業したら、エリと。
やっと一緒になれる―――


エリも“仙台の桜が満開になる頃、シンと同じ苗字になれるんだね”って。


今まで俺に見せたどの笑顔より、飛び切りの笑顔を見せて言ってたじゃねぇかよ………。



俺が東京へ行ってる間、何があった?


距離か?


月に一度ぐらいしか逢えなかったからか?


毎日、電話やメールしなかったからか?


俺が素っ気ない態度取って、エリを傷つけた?


その位で別れなきゃいけなかったら、とっくに別れてる―――――




< 658 / 755 >

この作品をシェア

pagetop