ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
前職の商工会議所や、今のシゲさんのオフィスで経営支援などのコンサルタント業務をしている俺。

人と対話してナンボみたいなこの仕事なのに。


実は、人見知りする性格、なのよ。


仕事では完全に“仕事”って割り切れるんだけど。
どうもこういう場では、上手く自分を伝えられないというか………。


ヘンだろ?

だからエリにも、家族にも、友人にも“ヘン”って、あっさり言われるんだよな………。


どうも…直らない。
仕事って割り切れない………。

多分、俺の脳内の知らないところで勝手に“これは割り切れる”“これは割り切れない”って振り分けされてるに違いない。

仕事以外は“素数”って事か………。

素数……………“素(す)”?


……………って事は、普段の俺は、割り切れないヤツ、って事か?


何だか頭がこんがらがってきた…………。

取り敢えず、席に着くか。



額に手を押さえ、席に着こうとした時、たまたま目をやった講堂の入口―――――


席を探すのに辺りを見渡す、一人の女性に、思わず、我が目を疑った。




「……………………ウソだろ………?」

思わず、声が漏れる。


俺と目が合った彼女も。
驚いた顔をして、持っていたハンカチを落とした。


「ゆか……こ………」


別れた元カノの名前を、小さいながらも音に発した。



結可子は、俺との目線を反らし、すぐさま自分の席へと向かった。



何で?
何でここに………?



結可子が何故ここにいるのか?
開講式が始ってからもずっと考えていて。
新養成課程入講生80名全員の名前が呼ばれる。



……………あれ?


結可子の苗字、“加東”のままだったけど………。



大学のテニス部の仲間から、苗字変わったって聞いていたような……………。




モヤモヤした気持ちのまま。
開講式が終了。


昼食、そして。

入講生同士のコミュニケーションを深めることに加え、今後の演習の中心となるグループディスカッション。

その合意形成のプロセスを学ぶことを目的とした予行演習“コンセンサスゲーム”へと時は移っていった。





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