ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】

#05 愛する女性(ひと)とのすれ違い



11月の夜明けは遅い―――――


朝6時を過ぎて外に出ると、空には水彩画のようなぼやけた紫が混ざり始まる。


―――――これがドーン・パープル(夜明けの紫)か…。

東の空に拡がりつつある濃紺に、緋色(ひいろ)を差した、幻想的な紫。

冷たい朝風を頬に受けながら、俺はじっと天を仰いでいた。


「―――――ねぇ、真一?」

「んあ?」


結可子の、しゃんとした呼びかけに、気の抜けた声で返す俺。

一つの事に集中すると、何処か他所を疎かにしてしまう。
それが今みたいな返事だったり。
俺の悪いクセ。


「………今更こんなこと言うのもおかしな話だけど………」


「何?」


「真一………あたしと、こんな夜明けまで一緒にいてよかったの…?」


「……………」


「一緒にいた婚約者を先に帰して……」

「結可子迎えに、エリ連れて警察に行ける訳ねぇだろ?」

「別にあたしは構わなかったのに…って、真一呼んどいたあたしが言うことじゃない…か」


横を歩く結可子をチラッと見ると、微笑ってるけど、どこか切ない表情だった。


瞳………目が笑っていない。
俺には少なくとも、そう見えた。


「大丈夫。俺たち夜明けまで過ごしたっつっても、あのファミレスにいただけだろ?」


そう。
俺と結可子は。
あの和食レストランに7時間もいたわけであって………。


疚しい事なんて、何一つしていない。

神に誓って。


エリに誓って―――――




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