月の心~それぞれの心
私は穏やかな気持ちに
そっと後押しされて
お月さまに微笑むと

心に浮かんだ事をゆっくり
語りはじめました


私自身ももうすぐ
天に召される事
けれどその前に
どうしても
伝えたい言葉がある事

私は老いた体を立たせ
両手をお月さまへ
少しでも近づけるように
伸ばしました


そして私は
お月さまが本当は
一人ぼっちじゃない事
地球に住む全ての生き物が
お月さまに感謝し
いつも見ている事

そして…
お月さまは
気付いてないけれど

本当は太陽がいつだって
見守ってくれていた事

言葉が溢れるままに
全てを語りました


全てを語り終えた時
私はこれから
天に召される事を
悟りました

だから私は…
私は伸ばした手を
精一杯広げて

まるで子供のように泣く
お月さまを抱きしめました


不思議ですね
本当ならそんな事
できるはずがないのに

でも私にはしっかりと
お月さまの暖かさが
伝わってきました



その後私は旅立ち
この遠い世界へ
たどり着きました

『ねぇ、お月さま』

私は遠い世界から
お月さまに向かって
優しく語りかけます

『私ねぇ、一つだけ…どうしても言えない秘密があったの。私の名前、最後まで教えなかったわよねぇ?』

そう言って私は
まだ小さかった頃を
思い出しました

『私は美月。美しい月と書いて美月…私はこの名前が大好きよ。でもねぇ、何より綺麗なお月さまを前にしたら…言えないじゃない』

そう言って私は静かに笑いました

『ねぇ、お月さま…私は今、貴方を見守る美しい月になれてるかしら?』
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