月の心~それぞれの心
お月さまは産まれてはじめて
死というものを知りました
大切な友達の死


お月さまは泣きました
大粒の涙がはらはらと
数えきれないくらいの
流れ星になって
地球に降りました


どれくらいの時が
過ぎたでしょうか

お月さまは泣き止み
自分の身にウサギの面影を
しっかりと刻みこみました


そのため遥か後の世界で
それを見た生き物達は
月にウサギがいる
そう言って
不思議がるように
なりました


再び一人ぼっちに
なったお月さま


海に映る自分に刻まれた
ウサギの面影を
愛しそうに見つめます


するとある時
水面に映る自分とは違う
海に浮かぶいくつもの
小さな月があるのに
気付きました

ふわふわと…
ゆらゆらと…

小さな月は揺れています


その光景を見て
少し心の安らいだ
お月さまは
小さな月達を
クラゲと名付けました

海の月と書いて
海月(クラゲ)

彼等はお月さまの流した
いくつもの涙でした

ふわふわ…
ゆらゆら…

いつも海月達は
揺れています
幾晩…幾年…

けれど決して
海月達は
話をしませんでした

彼等は言葉を持って
いなかったのです
< 3 / 31 >

この作品をシェア

pagetop