君の音

彼女の事


彼女が書いた文字を消していく俺と、真っ白になっていくボードを彼女は静かに見ていた







「俺もタツヤも
そんな事思わない。

今も、これからも」






少しうつむいた彼女の頭をポンポンとすると


もう一度ゆっくり伝えた






「信じて」







(ありがとう)






彼女は静かに書き始めた





(中学生までは聞こえてたの。

みんなと同じように話したり、聞いたり。

音楽もよく聞いた。
好きだった。




事故にあったの。

いつもと同じように自転車に乗ってたら車が突っ込んできた

血がたくさん出て
すごく怖かった。)






(目が覚めたら病院のベッドだった。

お父さんやお母さんが泣いてた。

でも、何も聞こえなかった
あとで先生にもう聞こえないんだよって教えてもらった時は たくさん泣いた)







「そっか。」




(ごめんね、こんなこと)




「こんなこと?
ミズキちゃんの事だろ。

こんなことじゃねーよ?
大切なことだよ。」










< 31 / 49 >

この作品をシェア

pagetop