幸せは蜜の味

日曜日

日曜日。
春特有の眠気に勝てず、私はなかなかベッドから出られなかった。
学校でも居眠りしちゃうのに、布団に包まってたら閉じた目が開けられない。
どうせ休みだし、もう少し寝ちゃおうかな…。
そう思って頭まですっぽり布団の中に潜り込んだ途端、庭で何かが割れる音がした。

「…何…?」

まさか、こんな明るい中に泥棒でもないだろうけど…。
私は気になって体を起こすと、カーテンを少し開けて庭を見下ろした。
そこには、バットを手にしゃがみこんだ弟の鉄平がいた。
…どうせ、素振りしてて鉢植え倒しちゃったんだろうな。
ビックリさせないでよ、もう…。
ちょっとドキドキしたせいで、もう眠気はなくなっていた。
ぐっと伸びをしてから窓の外を改めて見ると、近所の公園がピンク色だった。

「そっか、桜…」

平日の朝は学校に行くのにバタバタしてるし、帰りは遅いから、桜があんなに咲いてるのに気付かなかった。
ちょっと見に行こうかな…。
ついでに近くのコンビニに寄ってこよう。


着替えた私は、1階に下りた。
リビングに入って庭を見ると、お母さんに叱られてる鉄平がいた。
鉄平はまだ小学生。
私とは年が10歳も離れてるせいか、ケンカは滅多にしない。
鉄平が私に気付いて(助けて)って目でこっちを見てくるけど、自業自得なんだから大人しく怒られてなさい。

「お母さん。私、ちょっと出掛けてくるね。お昼までには帰るから」

お母さんに声を掛けると、お説教が止まって「いってらっしゃい」って返ってきた。
時計を見ると10時過ぎ。
ちょっとお花見して買い物するくらいなら、12時までには帰ってこられるよね。
再び始まったお説教を背中に聞きながら、私は家を出た。
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