太陽の宝石
太陽の宝石・第1章―始まりの夕立―
ミーンミンミン…。
セミがうるさく鳴く昼下がり。


「あ‐暇だ…。」と、うちわで扇ぎながらぼやく。
家にはクーラーなんて気の利いたものは無いから、扇風機とうちわで我慢するしかない。

「あちぃ…まじで暑い。あ〜あウチは貧乏だよな…。」
…人は極度に暑いと、ぼやきしかでてこないのだろうか。


「ったく、このイケ様にこんな暑い思いさせてイイと思ってんのか。歪むだろうが…。」
またぼやく。


…歪む?何が。
兄・陽太朗のぼやきを聞いた弟・光太朗は兄に対して激しくツッコミたくなったが、「♪〜」陽太朗のケータイの着信音で邪魔された。


「…陽にぃ、ケータイ…。」
「わ〜ってるよ…。」と言いながら取る気はないらしい。


はぁ…。ため息をつくと机から離れ、畳に放り出されていたケータイを拾い上げ「ほら」と言って手渡す。

それにノロノロと手を伸ばし「お〜サンキュ…。」と礼を言う陽太朗には全く若者らしさが感じられない。

「……」面倒そうにケータイを開いた兄を見ながら光太朗は危機感を覚えた。


そんな弟の危機感など露知らず「…ちっ、またコイツかよ…。」と着信を見て呟く陽太朗。


しまいには
「よーっし!!暇だしイイ女でも引っ掛けてくるかっ!なにしろ、この俺様に落とせない女はこの世にいないからな!!」
と言う始末。さすがにこれはアブナイ。


「…陽にぃ。」

「ん?なんだよ。」

「何かしたらどう?」

「…いや、だから俺は今からナンパという素晴らしい行いをしに行こうと…」

「ダメ。女の子禁止。」

その絶対的な口調に
「はぁ!?夏に女がいなかったらナニすればいいんだよっ!!」
と、逆ギレする。

「女の子がいなくてもナニかはできるでショ?」

「いや、できないっ。」

「できるって…。まぁ確かに陽にぃは日本でも3本の指に入るぐらいの女たらしだもんね…。」

「えっ…?お、お兄ちゃんの気のせいかな?光太朗くんもう1回言ってくれる?」

「だから陽にぃは日本でも3本の指に入るぐらいの女たらしなんだって…。」

「…に、日本で3本の指に……?」

「うん。このまま進むと世界チャンピオンも夢じゃないと思う。」
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