初恋【短】



怖くて目をつぶった、瞬間だった。

世界が動きを止めた。
動いているのは、あたしと晃平だけだった。

・・・晃平が、静かに言う。


「・・・葵、俺初めてみたときから葵が好きだったよ。・・・初恋だった。
だから、付き合えたとき夢かと思うぐらい嬉しかった。
絶対、大切にしようって思った。

・・・でも、俺はもう葵の傍には居れない。
本当は、ずっと葵の傍に居て、幸せにしてやりたかった。

葵・・・葵。

ごめん・・・」



・・・『ごめん』その言葉が、何よりも現実を突きつけた。

あたしの涙が、次々と晃平の顔に落ちる。



いやだ。

『ごめん』なんて、言わないで。

言わないでよ、晃平。


「晃平・・・ッ」

晃平の手をきつく握る。


泣き続けるあたしに、晃平は見たこともないような・・・辛い顔をした。

晃平がゆっくりと起き上がる。


そしてあたしを、抱きしめた。

あたしも晃平を一生懸命抱きしめる。



必死で離れないように、抱き合った。

・・・でも、別れは来てしまう。

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