忘れない
片想いからのスタート
始まりは何気ない事だった。いつもの時間のいつもの車両。
決まって端っこの二人がけの座席に座って、連載小説をゆっくり時間をかけて読む私の横の空席…。いつもは誰も座らないそこに静かに、とても静かに腰掛ける一人の男性。
初めて座って来た時は気にしないでただ小説に没頭出来た。

翌日もその翌日も、何故か彼は私の隣に腰掛ける。
ある日、小説を読むふりをしてチラッと彼を見てみた。年齢は私よりも年上。推定30半ばと言った感じでちょっと自分の好みとは違う。こんな事を彼に話したらきっと苦笑いするだろう。私はその日から彼をちょっとずつ観察するようになった。
< 1 / 7 >

この作品をシェア

pagetop