ケータイ恋愛小説家
プレゼント
「……で? 恋してた?」


「……ん」


あたしは綾乃の問いかけに小さく頷く。

あたし達は廊下に出て話し込んでいた。


廊下は教室よりさらに湿気を含んでいるような気がする。

暑いのか肌寒いのか判断できない微妙な天気は、梅雨に入ったことを感じさせた。

窓にはポツポツと水滴がついていて、それが少しずつ形を変えて集まり……やがて大きな塊となって窓をつたう……。

そんな一連の動作をぼんやり眺めていた。


「はぁあああああああ」


あたしはこの気だるい空気を払拭したくて、わざと大きなため息をついた。


「なんかさぁ……“好き”ってわかった瞬間、失恋したような気分だよー」


「美雨ちゃんのこと?」


「うん」


「まだわかんないじゃん。二人、付き合ってないんでしょ?」


「ん。多分ね……。だけどさぁ……相手は美雨ちゃんだよー? かなうわけないじゃん」


「ま、ね。たしかにね」


綾乃は「ハハ」と小さく笑った。


「うわーん。やっぱそうかー」


「ごめんごめん。これでも食べて元気だしなって」


手のひらに乗せたキャンディをあたしに差し出す綾乃。


「ん。あんがと」


あたしがそれを受け取ろうと手を伸ばした瞬間……

横からスッと大きな手が出てきて、目の前のキャンディが奪われた。
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