ケータイ恋愛小説家
誰も喜ばない言葉


ジージージー……

頭上から降り注ぐ蝉の声に耳が痛くなる。

ああ……夏なんだなぁ……なんてしみじみ思ったりして。


今日は終業式。

式を終えたあたしと綾乃は学校の近くの公園に来ている。

公園の中央には小さな池があってそこには数羽の水鳥が浮かんでいた。

さっきから大きなレンズをつけたカメラを抱えた女性が、木製のフェンス越しに水鳥を撮影している。


あたしはベンチに座ってその光景をただぼんやりと眺めていた。


「いいなぁ……鳥になりたい」


「何言ってんのぉ?」


綾乃はあたしの突拍子もない発言にクスクス笑う。


「なんか気持ち良さそうじゃん。ここよりは涼しそうだし」


「プール行けばぁ? ハチと」


わざと意地悪っぽい声で言う綾乃。


あたしは頬をぷぅと膨らませて抗議した。


ハチとはあれからも時々連絡をとったり会ったりはしている。

このままいけば付き合うことになるのかもなぁ……なんて漠然と考えることもある。

だけど、あたしはまだ答えを出せずにいるのだ。


「やっぱ蓮君が好き?」
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